バイヤーの24時間:華やかな世界の裏にある、孤独と時差にまみれた過酷なリアル

インスタグラムを開けば、パリの五つ星ホテルでの朝食、最前列で見るきらびやかなショー、そしてシャンパンを片手にしたアフターパーティー。世間が抱く「ラグジュアリーバイヤー」のイメージは、おそらくこうした華やかなハイライトで満たされていることでしょう。しかし、そのスマートな画面の裏側にあるのは、睡眠不足と孤独、そして終わりのない数字のプレッシャーに追われる、極めて体育会系な泥臭い日常です。

ファッションウィーク期間中、私の1日は午前6時に始まります。時差ボケで重い頭を抱えながら、まずは日本との連絡を確認します。現地が朝のとき、日本はすでに午後。店舗の売上データ、顧客からの急なリクエスト、未入金の確認など、大量のメールに返信することから戦いが始まります。

午前9時から午後8時までは、分刻みのスケジュールで動きます。あるメゾンのショーを見た直後、次のショールームへタクシーで移動し、そこから3時間ぶっ続けで何百着もの服をチェックし、オーダーシートに数字を打ち込んでいきます。移動中の車内が唯一の休憩時間であり、片手でパンをかじりながら、スマートフォンで次のアポイントの調整を行います。

バイイングは「センス」の仕事だと思われがちですが、本質は「数学」です。限られた予算(OTB)の中で、どのサイズを何着買い、それをいくらで販売すれば目標粗利を達成できるか。常に頭の中で複雑な数式を回し続けています。一歩間違えれば、数千万円の不良在庫を抱えることになるため、ショールームでの選択には常に恐怖が付きまといます。

すべての商談が終わり、夜のディナーを終えてホテルの部屋に戻るのは午前0時過ぎ。そこからさらに、その日撮影した大量の商品画像とデータを整理し、日本のチームへ発注指示書を送る作業が待っています。ベッドに入るのは午前3時、そして数時間後にはまた同じ日々が繰り返されます。

それでも、私がこの仕事を辞められないのは、自分が直感で「美しい」と信じ、リスクを背負って買い付けた1着が、海を越えて顧客の手に渡り、その人の人生を輝かせた瞬間を目の当たりにするからです。華やかさの裏にある孤独と過酷さ。それをすべて飲み込んだ上で、私は明日もまた、最高のラグジュアリーを求めて戦場へと向かいます。

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